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2010.10.28 (Thu)

 ~~サン・コンフィチュール~~

ひっさびさに小説
読みきりです
重たすぎるくらいに暗い話


え~これ友人同士で御題決めて出始め決めてなんか書こうってなったんです。
そしたらこうなった的なもの


ちなみに御題は”おっさんと犬”で出始めは”我輩は犬である”でした。

ギャグしか想定できなさそうな(酷)設定ではありましたがあえてドシリアスにしました
メンタルチックな表現などあるので苦手な方はお控えください。

ばっちOK
見ても後悔しない!
というつわものの方。
ごゆっくりぃ~♪

あ、長いですよ、ワード文書20ページ分(マテ

【More・・・】




 ~~サン・コンフィチュール~~




















え?もちろんフィクションだよ

我輩は犬である・・・なんて、何世紀か前の小説の出だしに似ているが実際僕は今犬だった。
しかしとても僕に密接な関係にあった犬だ。
こんな技術でまだ生きながらえているとはね・・・医療は時に残酷だなんて、生きている人間の誰が思うだろう?
人はいつだってそうだ。後悔の連続なんだ、逆に後悔しない人生に成長などあるだろうか?
_否、人間である以上後悔し、成長せざるを得ないのではないだろうか。
もっとも、現在僕は”人間”ではないのだからこの思考自体が可笑しいけれど・・・。
それでもゆっくり、意識ははっきりとしていった。


   ~~サン・コンフィチュール~~

「凪、起きなくっていいの?今日も病院朝からでしょ?僕もう先に学校行っちゃうよ」

「んん~・・・朝?一輝ごめん、朝ごはん」

「もう食べたから大丈夫、顔色よくないけど平気?」

カーテンからもれる光が顔を照らし始めた早朝、一輝のボーイソプラノが部屋に響いた。
しかしその声はその年相応の少年の声にしては酷く落ち着いて聞こえた。
気だるい身体を起こし、入り口に立っている頬に絆創膏、腕には包帯が巻きつけられている小柄の少年を見る


「また・・・いじめ?」


からからに渇いた喉
日が差しているとはいっても10月下旬
朝は冷え込み始めてきた
クシャリと髪をかきあげて、眠たい目をこする
今日も寝た気がしなかった。

俺、砂原凪(サハラ ナギ)はこの傷だらけの少年、宮乃一輝(ミヤノ イツキ)となぜか同居している。
まぁ周りから見ればぎりぎり親子に見えなくも無い年齢差だろう。

俺の短い質問に一輝はこくりとうなずくとそのまま学校へいった

いつもよりもぎこちない気がしたのは気のせいだろうか・・・

そして枕もとの時計に目をやる

AM 6:37


「そろそろ俺も出勤するかな」

ベッドから起き上がると、愛犬のハチが尻尾ふってこっちを見ていた。俺が一番遅かったのか・・・なんて考えながら髪を整えてスーツを着て、寝巻きをベッドに投げ捨て、栄養ドリンク一本飲み干し、俺の職場”第5セクター総合病院”へ車を飛ばす。

途中の信号で止まったとき、病院から一輝が出てくるのが見えた。

「あいつ学校行ったんじゃ」

そう思わず口からでたがまだ充分に学校には間に合う時間だろう

むしろ、いつも一輝はありえないくらい早い時間に学校へ行っている。
理由はよくわからないが、酷く虐められているようだから、何か関係あるのかもしれない。

ただ、なんだか胸の辺りがもやもやして、喉につかえるような、息が苦しい感覚に陥っていることは確かだった。








________________________________________________________________________________
書類を手に待合室を通る。
この時期冷え込み始めたせいだろうか、風邪の患者が多い気がする。もっとも、流行病の季節でもあるのだから、その予防接種患者も多いことだろう。
しかし、現在の医療といえば、風邪や病気などといったものよりも、メンタル面が発達したといっても過言ではないだろう。
昨今の人の心の荒みようといったらない。
現に、凪の事務処理の専属医師は病院[ココ]の精神科医だ。
もっとも、ドクタァといっても凪より一つ年下ではある。ちなみに凪自身のメンタル面での診断なんかもドクタァ、貴島 薫(キシマ カオル)が受け持っている。
凪は昔の記憶があいまいだった。そして同居している一輝は学校でいじめられている身、当然のようにここにカウンセリングに来る。
学校へ掛け合ったりするべきなのだろうが、一輝がそれを望んでいない。むしろ拒むようにして〈僕は大丈夫だから・・・〉なんて血の気のない顔で言ってくるものだからどうしようもない。
下手に動いて悪化させるのはよくないと、彼に関わる誰もが思っているだろう。

そして目的の精神科病棟第2診察室へノックし入る。

「おはよう、凪。」

「あぁ、おはよ。あのさあ_」

部屋の主、薫は凪の入ってきた凪の姿を確認すると、細フレームのメガネをグイっと親指で押し上げた。
何?というように薫は小首を傾げた。
もうすぐ三十路には見えない、少し幼い動作だった。

「あ~・・・一輝来なかった?」

それだけ言うと、薫は少し困ったように笑い、椅子の向きを変え、コンピューターに目を戻した。

「来てないの?」

「いあ・・・彼に言わないでって言われてたんだけど・・・君に目撃でもされちゃったのかな・・・」
「はぁ、御名答。あいつなんか俺避けてないか・・・?俺が嫌いならお前んとこ行きゃいいのに・・・あいつだってわけありで両親いないんだろ?」
凪のその言葉に、薫は少しだけ視線を宙にさまよわせ、考えたそぶりを見せたが
「別にいいんじゃない、どうせ僕らアパート隣で会おうと思えば数歩で会える距離なんだし・・・それにね、僕からも言ってるんだよ、でも・・・_」
そう、凪と薫は病院関係者ばかりが住んでいるアパートの隣人でもある。アパートというよりは病院経営なので寮といったほうがしっくりくるのかもしれない。
「でも・・・何だよ」
「いやね、本人の希望を優先させてあげたくて、一輝君、君と一緒がいいって聞かないんだ」
「は・・・なんでまた。俺なんかといたってつまらないだろうに・・・」

薫は椅子の向きを変え、凪に向き直り、右肘を机に立てて頬杖をついた。その表情は酷く真剣そのものだった

「あの子はいろいろ不思議な子だからねえ、知識量とか精神年齢絶対10歳じゃないよ。すごい大人びてる。どうかすると、僕以上にね」

「あ~それなんとなく分かるわ、俺もどうかするとあいつのほうが年上なんじゃないかと思うことが・・・って20歳も歳はなれてんのにこの表現はおかしいか・・・。」

凪は軽く冗談めいた言い方をし少し笑ったが、その目は全然笑っていなかった

「不安・・・?って顔してるね」
「まぁな、学校でのいじめがストレートしてんのかね、最近あいつ傷が増えたよ」

その凪の言葉に薫の顔に影が落ちる。

「そう、カウンセリングしてあげてるけどさ・・・いや、カウンセリングの内容は親にも誰にも秘密が常識なんだが・・・」
「なんか変ったことでもあったのか・・・?」
「いやね、さっきの話じゃないんだけど考え方が普通の子と全く違うんだよね、妙に語彙力もあるし」
それから薫は浮かない顔をして続けた

彼、一輝は自分をスケープゴートだと言った。
意味は“生贄の山羊”つまり、専門用語でいう苛め被害者のことである。
人は集団を作ると、社会的緊張が生まれる。しかし、それはスケープゴートがでることによっておさまり、集団生活を温和に進めることができるという・・・。つまりスケープゴートとは、“その他大勢”のためのそれこそ“生贄”なのだ。
一輝は自分はそれなのだと言った。
そして、自分は苛めている子たちにとって必要な生贄なのだと、僕はそのためにこの世にいる。だから何も悲しむことはない、自分のおかげで社会が成り立つのならその役できっと幸せだから・・・今の生活に不満など全くない
とまで言ったそうだ


「いや、それいろいろと10歳の子供が言うのは無理すぎる内容なんだが」
「僕も驚いたよ、どこまで大人びていてしかも歪んだ考え方してるのかと・・・・」

凪は盛大にため息をついた
「両親がいないのが原因なのかねぇ・・・」
「そんな子供現代では腐るほどいるって・・・。まぁ何かトラウマでも持ってるというそぶりはないけれどあの子かなり君に依存してるように見えるよ。」

そんなことを話しているうちに、午前の診察時間が始まった。
こんなご時世メンタル患者は多い。だから先ほどのべたようにメンタル医療の発達はすさまじかった。


_____________________________________________
「あ、凪どうしたの?」
ちょうどお昼休みだった。
凪がすごい速さで廊下を走っていたのを見た薫はひどく訝しみ、凪を呼び止めた

「薫、ちょうどよかった。あいつの携帯つながらないんだけど・・・コンピューターでGDP検索してくれないか?」
「学校じゃないの?」
「学校から連絡が来て、今日来てないって言うんだ。」

柄にもなく凪は焦っていた。
朝からなんだか嫌な予感はするし、一輝はまっすぐ学校へいかず病院に寄っていた。
道中で倒れた・・・なんて可能性も。
考えたがそんな異常な光景はだれかがすぐに病院、凪の職場に連絡が来るはずだからその線は除外だが、学校にいないとなるとどこへ行ってしまったのが心配になるのが筋である。
二人は早足に自室に戻り、コンピューターのGDP探知ソフトを立ち上げる。
親のいない一輝と生活を共にするため、一輝の携帯にはGDP機能がつけてある。

「え・・・・?」
「どうした?何処に・・・・って・・・・なんで」

一輝のGDP反応は・・・
凪の部屋。
アパートの凪と一輝の生活している部屋にあった。

「携帯・・・家に忘れて行ったんじゃないの?」
「それはない。あいつは肌身離さず持ってたはずだ。昔亡くなった親の形見だって言ってたから・・・。」
「あぁ・・・それであの子いつまでも旧式使ってたんだ。とりあえず君帰りなよ、僕なんか嫌な予感するんだよね・・・。」
普通ならどうにあ連絡を取るだけで仕事を続けるのだが、とてもそんな気分にはなれなかった。
だから、凪は薫の言葉に甘えて帰宅することにした。
車の運転はあまり集中できなかったが、事故を起こさなかったということで無意識のうちにきちんと標識などに従っていたのだろう・・・むしろ毎日通る道なのでこの道の勝手を知らないうちに知り尽くしていたからかもしれない。

アパートの一階玄関に着く。
犬を飼っているからアパートの部屋は一階しか使わせてもらえなかったが、階段を上るのも面倒などと怠けたことを考えており一階になったのはむしろラッキーだと言えるかもしれなかった(それから犬を飼い始めていたら名前をラッキーにしていたかもしれない・・。日本犬なのに)
そんな玄関で、ずっと愛犬のハチの鳴き声が聞こえる。相当うるさく吠えているようだ。
何かあるのだろうか・・・凪は予想がつかなかった。
本当に携帯だけ家に忘れたとか、そうだとしたらどうやって居場所をつかめばいい?
先立つ不安に駆られながら鍵をかちゃりと音を立ててまわし、ドアを開ける・・・・と
「ん?」
中の空気がいつもと違う、生温かいような、血臭を思い浮かべるようなそんな感じがして焦りが恐怖に変わっていくのを感じた。
「え・・・・?いや、まさか」
明らかに、鉄の錆びついたような血の匂い
震える足を前に進めるのがこんなにも苦痛だとは思わなかった。
そして、凪の寝室へ足を踏み入れたとき、目の前の光景に思考がストップした。
「え・・・何、コレ・・・。」
部屋は赤く染まっていた。
ベッドの上で一輝がうつ伏せになって倒れているのが嫌でも確認できる。
「い・・・つき?」
震える足を進める。重たい、こんなに自分の体って重いものだったっけ?

「いつき・・?いつき!起きろって、ねぇ!いつきぃいぃいいい!」

いい歳して・・・いや、年齢なんて関係ないと思う。
記憶があいまいだが何年もともに過ごした、我が子のようなそんな彼の姿に思わず叫んでいた。



すぐに救急車を手配したが遅かったようだ。
分かっていた。分かってはいた・・・凪が駆け付けた時にすでに一輝は呼吸してなかったし体も相当冷たかったから。
でもなぜ救急車を呼んだかって・・・それはまだ一輝が死んだと認めたくなかっただけだ・・・。理由なんてそれだけ


はぁ・・・とため息をついて腕時計を見た


AM 6:37


「え・・・・?」
目を疑った。
朝起きた時間は確かにAM 6:37だったはずだ。
時計が壊れた?
いや?
病院内のどの時計も同じ時間を指しているしましてやディジタル時計の凪の腕時計は電池切れなんかを起こした場合はまず表示が消えるだろう・・・。もっともソーラー充電なのでモグラみたいな生活でもしない限り電池が尽きることはないだろうけれど・・・。
「どういう・・・こと・・・?」
目覚まし時計もディジタルだから、間違っているはずがない・・・。

きっと疲れてる。
そう、片づけることで自分を理解させた。



あれからどのくらい経っただろう。
アパートの小さな部屋は、二人でいるときから明るい話題などはほとんどなかったのだが、それでも今の独りきりに比べれば暖かいものがあったのではないかと思う。
この小さな部屋も独りでは広すぎる・・・そんなことを考えていた。

_ワンワン

そんなことを思考していた時だった。愛犬の柴犬、ハチが耳を垂らして縋りついてきた

「あはは、ごめんな、お前がいたんだったな。俺は独りじゃない・・・よな・・・?」

自然と目頭が熱くなって涙がこみ上げてくる。
仕方ないだろうな、何年一緒にいたんだか・・・。
いつか引き取り手が現れて離れ離れになる覚悟はしていたつもりだった。

でも、まさかこんな形で別れることになるなんて・・・予想だにしていなかった。

<うん、独りじゃない。僕はずっと一緒にいる>

「え・・・?」

幻聴・・・?確かに、一輝の声でそう聞こえた。

「一輝・・・?いるわけないよな・・・。」

あ~疲れてる。
そう独り愚痴ると夕日の沈みかけた空を見上げて窓を閉め、シャワーを浴びにバスルームへ行く
ハチが後ろをとてとてとついてきた
「ん?ハチどうした~?」
_きゃんきゃんっ
何か言いたそうにしてるが、その意図は当然読めない。
バスルームに入り熱いシャワーを浴びる。
かなり冷え込んできたこの時期にこの暑さは身に沁みてとても心地よかった。
体の汚れを落とすように、余分な感情など捨ててしまえればどれだけ楽になるだろう・・・。考えても無駄だと分かっているがそう考えずにいられなかった。

<三樹弥、やっぱりあなたは僕のこと嫌いなままなのかな・・・?>

「!?」

また、はっきりと一輝の声が聞こえた気がした。
三樹弥って誰?
俺は凪だ、一輝の知り合い?苛めっ子?
そんなことを考えたが幻聴に対してそんなに真剣になってもなぁ、と考えなおし、バスルームから出て、タオルで髪をふく。
近頃何度目か分からぬため息を吐きタオルを頭に載せたままズボンとシャツを着たラフな格好でリビングのソファに腰掛ける。
<淋しい?>

「まぁ、ね・・・。」

もう幻聴も気にならなくなってきた。
むしろ幻聴なら楽しんでしまえと・・・・
こういうのを習慣化の受信濾過っていうんだろうな・・・以前薫からそんな言葉を聞いたことがあった。
断続的に同じことがあっても、他に集中していたりすると気にならなくなる・・・そんな意味だった気がする。


<でもあなたは僕のこと嫌いだよね>

「なんでそう思う・・・?」

<だって、僕のせいであなたは>

_きゅうぅぅん・・・

「!?」

幻聴は途中でハチの鳴き声に変わった。
酷く心配したような顔でこっちを見上げている。

「どした~?やっと俺を独り占めできるってのに幻と会話するなってか・・・?ってもうこんな時間・・・。お前ご飯もらいに来たんだな」

ハチの頭をなでてやるとその手に嬉しそうにすり寄ってきた。
あぁ・・・犬は従順で懐くから可愛いなぁ・・とか思いつつ、一輝はこんな風に懐いてはくれなかったなぁなんて思う。


「だめだ、最近思考があいつでいっぱいだ・・・。幻聴聞こえるとかリアルにやばいな・・・」

ハチはきゅう~と返事をしたかと思えば尻尾を振って凪を見上げすぐに嬉しそうにワンと鳴くと奥の部屋に走って行った。




「なぁ・・・最近お前やつれてない?まぁ気持ちはわかるんだけど・・・・」

「ほっとけ・・・自覚してる、毎日幻聴が聞こえるんだ」

「幻聴?」

凪はどうにか仕事に復帰していた。
まぁ仕様ないというか、人間時間がたてば忘れるものだ。
それは薄情だとかそういうことではなくシナプスが切れなければ人間は生きていけない。
人間は覚えることができるなら忘れられる強さを持っていると言っていいだろう。あの時の悲しみを、ショックを・・・忘れてはいけないと思っているがやはり忘れてしまえば楽なのだ。

「お前さ、幽霊って信じる?このご時世に」
「甘く見てない?現代医療科学では幽霊の存在というかその・・・人の魂だとかの学問あるよ?」
「え?マジで!?いや、でもあれは一輝じゃないだろう・・・声はそっくりだけど」
凪のいきなりの質問に薫は特に顔色を変えることなく答えた。

「まぁさ、そのうち慣れるでしょ?ってもう慣れてんのかな、結構日にち経ってる気がするし。ホラ、仕事仕事!午後の診察はじまるよ」


どこか府に落ちない・・・むしろ薫の言葉に違和感さえ覚える。

ケッコウジカンタッテル・・・・?

え?何で特に日にちとか話してないのに薫知ってるの?
とか
なぜだろう、今の凪には怖くて聞けなかった・・・。


ガチャリと鍵を開けて中に入る
<おかえりなさい>

そんな一輝の声がした
玄関にはハチがお座りをして待っていた。

「ただいま」

ぼーっとした頭で何も考えられなかった
精神的疲労がかなり大きい
そんなことを言ったら薫が薬を処方してくれた。
今までもずっと服用しているものとは違っていた。

今までも、なんでか安定剤とか出されていた。一輝はあんなだし俺も精神的負担があったみたいで・・・・


SUN Confiture


赤い錠剤にはそう刻まれていた。

なんだか名前の割に禍々しい赤い色をした錠剤だ。血のように赤黒く・・・ちょっと飲むのをためらうような色
しかしながら幻聴なんかに悩まされていたせいもあり、口に含むと多量の水と一緒に喉の奥にそれを押し込んだ
舌にあたった部分から、やはり色を見てしまっているせいだろうか、血のような味がした気がしたが、きっと気のせいだろうと思った。


    SUN Confiture
 SUN [Sur Un Nuage] フランス語:雲の上、幸せな時間
       Confiture フランス語:ジャム
_________________________________

それはまるで、砂糖のように
ジャムのように煮詰めて煮詰めて
赤い赤い 甘い甘い
ジャムのように・・・
とろけて堕ちていく

SUN Confiture

幻聴が治らない、むしろ酷くなっているような気さえしてきた。
なんというか、独りでいるからだろう、ハチが一輝のような気さえしてくる

流石にもう流せないと、薫にいろいろと話を聞いてもらうことにした

しかし・・・

「ふ~ん・・・まだ思い出さないんだ」

そんなことを唐突に言われた
はっきり言って意味不明である。
思わず凪は黙りこくってしまう

「ねぇ、凪ぃ」

薫は凪に背を向けたまま語尾を少し延ばした。
普段の薫からは出てこないようなしゃべり方に聞こえた

「君は、自分が誰なのかわかってる?」

「???」

意味不明な質問が次次と出てくる

「じゃあさMultiple personalityって知ってる?」

その言葉に、嫌な警告音が凪の頭になりだした
まさか、そんな自分が?

「・・・多重人格」
「そ」

薫はさも当たり前のように返す

「気づいてる?自分がそれだってこと・・・しかも、ね。凪、君は作られたほうの人格なんだよ」

なんか、頭を殴り飛ばされたような衝撃が走った気がした。
少なくとも凪の思考は今ストップしてしまった。

俺が、存在しない?
自分自身の逃げ口に作られた?


「な・・・んで・・・」

薫はくるりと椅子を回転させ、凪に背を向けた

「実験台。多重人格なおす方法はまだ模索中でね。これだけメンタル医療発達してんのに・・・人の魂を他のモノに移すことだってオカルトの領域を出たっていうのに多重人格なおす方法がまだ見つかってないんだ」

「ちょとまて」

凪は薫の中の言葉で
さらりと言った薫のセリフの中に
あってはならないものを見つけた

「人の魂を他のモノに・・・・?」

そこだけ復唱すると、薫の肩が震えだした。

「ふふ、あはははやっぱり君は利口だね。今の僕の一言で全部分かったんでしょ?幻聴の正体」

「お前、一輝をハチに憑依させたな!」

「うん、悪いとは思ってたけどね。あぁせっかくだからこれも種明かししたほうがいいのかな・・・?一輝君は別に学校で苛められてないよ」

くるっと振り向いた薫の顔は、今まで見たことないくらいに笑っていて
その笑みは黒い大人のものを確実にはらんでいながらも
無邪気におもちゃを与えられた子供のそれにも似ていた

「じゃあ・・・一輝は、いったい誰に怪我を・・・誰が一輝を殺したって・・・・っ」

「自分でも分かってるんじゃないのォ?」

くすくすと薫は笑うと一つの錠剤を一つ凪に手渡した
それは今までに処方されていた薬“SUN Confiture”とほぼ同じ形状色をしていて
でも“Sang Confiture”と書いてあった。

それを見て、Sangの表記を見て・・・
寒気がした
嫌なことを考えた
いや、思い浮かんだ

「なぁ、薫これ・・・」

「うん、多分それ飲めばホントの自分の記憶が取り戻せるよ。違和感あったんでしょ?幻聴だけじゃないいろいろと」

「なぁ、薫これ・・・」

茫然とした頭で何も考えられない顔を上げる
薫の顔を見るのが怖いとさえ思った

「この薬、材料は?」

「宮乃一輝の血液だけど?」

____________ Sang フランス語:血
_________________________

頬を撫でる風が妙に暖かくというよりは生ぬるく
夕焼けというよりは妙に赤黒い雲が立ち込めていて
心はどす黒く沈み
ああ、きっと人間は忘れることで多くを失い得ているんだと
思わざるを得なくなった


ごくりと、水も使わずに錠剤を喉に押し込んだ。
いつにもまして血の味、匂いがする。
途端に、凪の意識はあるままなのに別の自分がいることに気がつく。
だが一番最初に思い出したのは
忘れもしないあの光景


「僕がいなければ、僕が産まれなければ・・・」
何度も、何度も殴ったのを覚えてる。
いけない感情だということも分かってる
最後に刃物に手を出したのも覚えてる
「いいんだ、僕は。お父さんになら殺されても。だってそれが自然の摂理だもの」
黙れ!
そう、お前さえ産まれてこなければ・・・
どうして?
どうして?
どうして・・・お前だけ助かって彼女は死んだ?
どうして・・・俺だけ取り残された?
お前がいなければ今でも彼女は元気だったに違いない

そんな想いが
胸を締め付ける

「だから僕何されてもお父さんならいいんだ・・・僕にはお母さんいないから、どんな形でもお父さんがいてくれるだけで嬉しいよ・・・。お父さんに殺されるなら・・・本望だから」


虚ろになって濁っていく瞳
自室のベッドの上で喉から血を流し最期に自分へ言った宮乃一輝の一言は

「ごめんなさい」

産まれてきてごめんなさい・・・そう何度も何度もこと切れるまでつぶやいていた。
AM6:37
俺は忘れられなかった。
死んだ彼女を
彼女を亡くした悲しみを

弱いと思った
なんて弱い人間なんだと・・・
挙句息子の一輝に手を挙げて殺害にまで至るなんて・・・

薫からカルテが手渡された
そこには自分の顔写真と
名前の欄には、“砂原 凪”ではなく“宮乃 三樹弥”と書かれていた

人格統合の瞬間・・・だろうか、すべての今までの改ざん記憶が薄れていく
自分の、凪という人格は完全に消えるわけではなかったが矛盾のために作られた記憶が全部作りものであったということだけは妙なことにすぐに理解できた。

目から涙が一筋、頬を伝っていくのが分かった







______________
「俺は・・・忘れられなかった・・・彼女が・・・梨花が出産の際多量出血で死んだことが・・・」
「うん、僕は精神科医だから直接かかわってはいないけどね、彼女の意志だったんだ。」
薫のこの話は意味がよくわからなかった
どういう意味?
そう聞いたらこう返ってきた
「今の世代、出産での死亡率は限りなく低いよ。だけどね、どうしても避けられないこともあったってわけ・・・。
子供と母体、どちらかしか守れないって産婦人科のドクタァが言ってた。だから僕は彼女に聞いたんだ。」

「・・・いい・・・やめろ、その先を言うな・・・」
「自分と・・・子供、どっちかしか生きられない。


どっちを選ぶ?
ってね・・・。当然のように彼女は子供を選び、その事実は君に言わないでって言ってた。
っはは、僕君の家族に嘘ばかりついてるね・・・。君の人格のこと、梨花さんの最期の決断・・・一輝君の苛めのこと・・・。」

聞きたくない、っと凪は両手を耳に当てて嫌だ嫌だと首を振っていた。
まるで、幼い子供のようなその姿は酷く滑稽に薫の眼に映った。
「で・・・?お前俺に何した?今でも生々しく梨花の死のこととか忘れられない・・・一輝のことだって・・・」
「おやおや、まだ凪の人格が主で出てるんですか・・・そう・・・。君にはずっと少量梨花さんの血液から作った錠剤を処方してましたよ・・・あの赤い錠剤じゃなくて、ずっと前からのね・・・・。
血のつながりの濃いものにシナプスが切れず集中し続けてしまう効果のある・・・つまり忘れられない薬
おかげで君は思うようにどんどん壊れていったよ、簡単に人格も分離した。
おっと、逆恨みしないでよ?総合病院院長からの指令だったんで・・・。」

凪は頭垂れて、それでも弱弱しく薫を睨んでいたのだろう・・・
そう、あえて言葉で言うならば
絶望
それがぴったりとあてはまるだろう。
今まで信じて、なんでも相談できた親友のような存在・・・
そう思ってたのは俺だけで
本当の俺や目の前の薫は自分をそんな風には思っていなかった。
悲しいとか通り越して、本当・・絶望だ



でも大体分かりましたよ・・・

そんな薫の落ち着き払った声が頭上から降ってきた
妙にイライラする
「結局多重人格なんて・・・トラウマとなる人間が一人や二人いるものだ・・・。今までの患者もそうだったからね・・・。そういう深いトラウマを生み出した人間の・・・血液ないし肉体の一部で化学反応起こして薬作っちゃえば、簡単にシナプスは切れて・・・強くすれば自分さえ忘れられる・・・
とんだ麻薬にもなりかねないけれど・・・」

「・・・・満足?」

凪は消え入りそうな声でそうつぶやいた

「え?」
「・・・満足?俺の家族ばらっばらに引き裂いて・・・楽しかった?」
「言ったでしょ・・・上からの指令なんだよ」

凪はバッと顔をあげるとキッと薫を睨みつけ

「自覚してる?お前、俺が見たことないようなすっげぇ楽しそうな顔してんだよ!」

「あぁ・・・隠しきれないか、ははは」

薫はメガネのフレームを親指で押し上げた

「だって僕も梨花さんのこと好きだったし・・・お前に取られて幸せ家族しやがって!って何度思ったことか!」

「薫・・だってあの時確かにお前」

「あぁそうだろうよ?そりゃそんな場で誰が本音言うかよ!」

薫のその言葉に凪は目の色を変えたが
ゆっくり立ち上がるとポケットの中から小型の拳銃を取り出した。
数世紀前と違い、この時代この程度のものは簡単に手に入るものだった。
治安の悪い場所では自分の身は自分で守れ・・・が当たり前の場所だ。
そう、ここ第5セクターは病院があるだけあって、けが人病人が一番出やすい場所に建っている。拳銃など、そこらで手に入るものだ。

それを見た薫は自分が殺される・・と身構えたが、特に抵抗は見せなかった
薫自身、もうどうにでもなれ・・・だった。
とうの昔に生に関する執着など捨てた。
捨ててしまっていた。自らの薬物で凪見たいにくるってしまえればどれだけ楽だろうとおもってはいたが、逆にそれは怖かったのだ。
凪は、拳銃を一度薫に向けた
静かな目で薫はそれを見ていたがやがて凪が動いた


その拳銃を持つ手を銃口を凪自身のこめかみに当てた
その光景に薫は眼を見開く

「三樹弥、待て!」

「さよならだ・・・最初から、こうするべきだったんだ。一輝にも酷い想いさせたし・・・。俺は三樹弥はとうの昔から俺の中にもういない」

そして
引き金を静かに引いた










そう、これは僕ら家族の物語
結局最期まで意識を現実世界に残せたのは僕一人。もっとも今は人間の姿じゃないけれど、犬の寿命なんて知れてる。
すぐにお父さんお母さんの場所へ行けるんだろう・・・。
でも、もう僕の言葉が通じる相手はいない。
血の繋がっている人にしか言葉は通じないし向うの、かつての僕の種族である人間の言葉すら分からなくなってしまっている。
だからって、別に犬の言葉が分かるわけではない。
つまり・・・そう
もう僕は、誰とも会話することができないのだ。

死を待つのみ・・・。

それでも、僕はきっと幸せだったのだろうと思う。
多くの人は“可哀そう”と表現するだろう。だけど僕は、欠けているおかげで家族の大切さを痛いほどに知ってる
お父さんがお母さんを大好きだったってこと嫌というほどに知ってる。
歪みすぎた感情のどこかにきっと幸せが隠れていると、僕は信じているから・・・。
いつか僕は
貴方のもとに
たどりついて見せましょう
次に会うときは
永遠にやさしく抱きしめてほしい
人間の社会なんてちっぽけで
こんな個人的感情など世界では見えないことで
それでも僕はこの薄汚れた世界に
貴方達の子供として生を受けたことに
感謝しているのだろう・・・。

視界の端に映る、両親の墓標を眺めながら僕はこの場所で雨に打たれ続けている
一歩たりとも、この場所を離れず、貴方達と共に同じ場所で僕も眠りたい・・・









___________・
____________________・
Sang Confiture?
__________[Sur Un Nuage] SUN Confiture__________
/.Fin./ __________________________________________________________________________







名前読み方

砂原 凪(サハラ ナギ)
貴島 薫(キシマ カオル)
    宮乃 一輝(ミヤノ イツキ)
    宮乃 梨花(ミヤノ リカ)
宮乃 三樹弥(ミヤノ ミキヤ)
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テーマ : 創作(オリジナル) ジャンル : アニメ・コミック

01:19  |  小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

こんばんは。読ませていただきましたよー。
(スイマセン今さらですが…)

とりあえず…泣きそうになりましたw
親子モノに弱いんですよねー。

うーん、スゴイですねー。なんか才能が出てますね。
自分も小説書いてみたいなーとか思うことはありますけど
実際なんも浮かばないですもん。

キャラ作りが上手いんで台詞がそれぞれすんなり入って
きますね。一輝くんが悲しいです。早く3人一緒になれると
いいなーと思ってしまいます。

短編アニメで見たいです。
あ、そうなるとマジ泣き決定だwww
おぽん |  2010.11.10(水) 23:09 |  URL |  【コメント編集】

■はわわ

ありがとうございます!
まさか読者様がいらしてくれるとは←

キャラ作りいいですかね?嬉しいお言葉有難うございます!
御題がかなり難題でしたが書いててとても楽しかったです。
というのも長編がかけない人間なので最近単発ばかりなんですけれどね

私が文章を書くとメンタルなんたらかんたらになるww
とにかく最後まで御付き合いいただき有難うございました!
祐 |  2010.11.10(水) 23:14 |  URL |  【コメント編集】

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